
時に1576年(天正4年)、長篠の戦いで甲斐の武田勢を破った織田信長は、琵琶湖を望む安土山に前代未聞の巨大な城を築くことを宣言した。天主(天守)は五層七階、金箔瓦に玉虫のごとくに輝く色とりどりの外装を持ち、一時は内側がキリスト教大聖堂のように吹き抜けとなるように構想されたという独特の巨城は、まさに信長の天下統一事業の先魁的象徴ともいうべき絢爛豪華かつ空前絶後の城郭であった。果たして、その不可能を叫ばれた建立は、如何にして実現したのか?

原作は直木賞作家、山本兼一が第11回松本清張賞を受賞した傑作歴史小説『火天の城』(文藝春秋刊)。およそ15億円の巨費を投じて完全映画化した物語の中心にいるのは、これまで史実の表舞台に出ることがなかった宮大工・岡部又右衛門(おかべまたえもん)。彼の尽力を真正面から活写し、驚くべき安土城築城の実態に迫った本作は、単なる乱世の時代劇という枠組みを越えて、まさに「戦国時代のプロジェクトX」と呼ぶべき人物発見、歴史再発見の旅となった。
“木組みは心組み”というもの作りの精神を、職人とその門下生の姿に託しつつ、同時に名もなき女性たちの想いも織り込んだ怒濤の物語は、想像を絶する築城のスペクタクル映像と相まって、感動の涙を誘ってやまないだろう。


知られざる戦国時代の名工、岡部又右衛門を演じるのは西田敏行。昨年大ヒットした『相棒−劇場版−』『ザ・マジックアワー』での好演に続き、今年も主演映画が並ぶまさに日本映画を代表する彼だが、巨城建築に情熱を傾ける大工一門の長役を担う今回は、まさにこれまで培ってきた俳優人生の円熟を極める仕事になったといえるだろう。そんな城作りに没頭する夫を常に微笑みをもって支える妻・田鶴役には大竹しのぶ。西田とはおよそ30年ぶりの本格共演であり、内助の功を見事に表現している。また、岡部家の一人娘・凛として、原作にはない役どころを演じるのは本格的な時代劇出演はこれが初めてとなる、福田沙紀。清楚で可憐な和服姿は、壮大な築城絵巻の中で溌剌と映えた。

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不世出の城作りの物語は、大いなる群像のドラマでもあった。巨大な建築事業に違うことなく、大作にふさわしい共演陣が名工の奮闘劇を支えている。まず又右衛門門下の大工連には、凛と恋仲になる市造に 石田卓也、若頭・平次に寺島進、熊蔵に山本太郎、引頭・弥吉に上田耕一、太助に「ジョンミョン、そして留吉役でタレントの前田健が並ぶ。同じくタレントの出演という点では、羽柴秀吉役で河本準一(次長課長)が本格熱演し、堺の商人役で遠藤章造(ココリコ)がゲスト出演しているあたりも見逃せない。ほかにも、命を賭けて理想の檜を又右衛門に渡す木曾の杣頭(そまがしら)・甚兵衛に緒形直人、又右衛門と懇意の石工・戸波清兵衛に夏八木勲、さらに熊蔵が思いを寄せる水仕女・うね役の水野美紀をはじめ、熊谷真実、渡辺いっけい、田口浩正、西岡コ馬、笹野高史、石橋蓮司、福本清三などなど、個性的で豪華な顔ぶれがそろった。

監督を務めるのは『化粧師 kewaishi』『精霊流し』の田中光敏。前2作品でも組んだ横田与志による原作の脚色を得て、ここでも全力で生を全うしようとする人間たちの物語を繊細に捉えつつ、城作りのダイナミズムをスケール感豊かにフィルムに収めている。撮影に『血と骨』『おくりびと』の浜田毅、美術監督に『たそがれ清兵衛』『隠し剣 鬼の爪』の西岡善信、そして音楽担当に『レッドクリフ』『真夏のオリオン』の岩代太郎と、希代の名工に負けぬ映画界屈指の名手がそろい踏みした。また、撮影は2008年9月3日にクランクイン後、およそ3ヶ月の長期にわたって敢行。京都周辺、木曽福島、台湾でのロケーションに加え、淡路島に2万平方メートルという原寸大の敷地面積を得て、実に数万本の丸太で足場を組むオープンセットを建築。さらに、東映京都撮影所でのセット撮影では、安土城の地下蔵作事場や安土城の天主内を、一本数百万円の檜を惜しむことなく使用して再現。まさにホンモノの迫力で一大事業を現代に甦らせた。
果たして、現在の価値にしておよそ1000億円もの巨費が投じられたという安土城築城の真実とは?
今秋、あなたは驚愕の歴史の目撃者となる!

